【TESEN文庫 第11話】お母さんがシェアハウスに来た。

JOURNAL|TESEN

大阪シェアハウスの運営スタッフSHUです。

 

シェアハウスで働く私が気ままに連載小説を書いております。

 

「シェアハウスってどんなところ?」「どんな暮らしがあるの?」

 

この小説はそんな方へ向けて書いています。

 

ときどき実話なフィクションです。

 

一緒にシェアハウスの暮らしをのぞいてみませんか?

 

シェアハウスで起こる素敵なことが少しでも多くの人に届いたら、そして豊かな暮らしを多くの人に。

 

|前回までのお話

       シェアハウスで小料理屋が出来るまで

 


「私もシェアハウス見てみたい。」

 

今年はお盆に実家に帰ってないから、時間を持て余しているからなのか。

 

突然母からLINEが来た。

 

普段、あまり自分のしたいこと、やりたいことを口にしない母がシェアハウスを見てみたいと言っている。セミが鳴いてる。

 

とりあえず既読だけつけとこ。

 

既読をつけることで私は元気に暮らしているよ〜が伝わればいいと思った。

 

そんな軽はずみの自分本位な思いは届くはずもなく、怒涛のメッセージが母から送られてくる。

 

スマホ嫌いの母がこんなにスマホを使いこなせるとはあの時は思わなかった。

 

「お〜い。」

 

「生きてる〜?」

 

「既読だけして返信はしないのか〜」

 

通知が溜まっていくいく。

 

通知が二桁になったところで通話ボタンを押した。

 

「はい。もしもし。なに〜?」無愛想に答える癖がなくならい。

 

「ちょっとあんたが住んでいるシェアハウス見てみたいんやけど。」と母が答える。

 

「なんでなん〜?」ぶっきらぼうに問う。

 

「いまシェアハウスの最寄り駅についたんやけど」と母が言う。電車がホームを出発するメロディーが流れてる。

 

「ええ〜めっちゃ急やん笑」と言いながら靴を履き替えた。

 

駅の改札前に行くと母が見知らぬ人の柴犬を撫でながら待っている。

 

他人との壁を素足で乗り越えてくるいつもの母がそこにいた。お母さんシェアハウス向いてるやろな〜と思った。

 

「ちょっと来るにしても急すぎるや〜ん。」と私。犬と目が合う。

 

「この犬かわいいやろ?昔飼っていた犬と似ているな。」と母。会話が噛み合わない。

 

「ははは」と上手に笑い流され、シェアハウスに向かう。

 

母と並んで歩いていく。

 

いつもの道のりが少し長く感じる。

 

いつもの景色が少し違って見える。

 

シェアハウスの前に着いた。着いてしまったとでも言おうか。

 

「ここが私の住んでる家です。」と大袈裟に手を広げ紹介してみる。

 

すると玄関から勢いよくシェアメイトが靴を踵に引っ掛けながら飛び出してきた。

 

「あら、こんにちは!いつも娘がお世話になってます〜。」と斜め右下に頭を下げる。急に表向き丁寧な母。

 

「こんちわっ!」体育会系の返事をシェアメイト。

 

シェアメイトがちょっと急いでる感じの様子を汲み取り、「ごめんね〜」と私。

 

母はにこやかに「いってらっしゃい」と声を掛ける。

 

「じゃあちょっと案内するね。」と母に伝える。

 

シェアハウスの扉を開ける。

 

なぜか足が床につかない感じ。私フワっている。

 

おぼつかない私の横で、ずかずか自分家のように進んでいくのは母の方。

 

リビングやキッチンにいたシェアメイトの一斉の視線がこちらに向く。

 

「こんにちは〜お邪魔します〜♪」

 

一瞬新しい入居者さんなのではという、みんなの期待感と、動揺感は、母の後ろから覗かせた私の顔で消えていった。

 

「みんなシェアハウス楽しい?」

 

「どれくらい住んでいるの〜?」と突然のお母さんインタビューが始まる。

 

嫌な顔せずにみんなが答えていく。

 

シェアメイトのみんなは夕方という時間帯もあり夕食の支度をしているところだった。

 

夕食どきに少し申し訳ない気持ちになった。

 

ふとキッチンの方を見ると、何故か母が包丁を握ってネギを刻んでいる。なんで笑笑。

 

今夜はたこ焼きをみんなで食べるみたいだった。

 

母も参加する気まんまんでパーティの主催者のようにネギを刻んでいる。

 

私のシェアメイトと馴染んでいる。それはまるで母がずっとここに住んでいたみたいだった。

 

「タコ足りるかな〜?」「タコ以外にも何か入れてみる〜?」と夕食の準備をはしゃぎ楽しむ母。

 

結局母はたこ焼きを20個を食べてタクシーで帰った。

 

気づいたら夜の12時をまわっていた。

 

母は無事家に着いたとのこと。

 

一言LINEが来た。

 

「あんた、ええとこ住んでるな〜」

 

あとあと聞いたら母は学生の頃は寮に住んでいたみたい。知らなかった。

 

あまり自分を語らない母。

 

その母がたこ焼きを食べている時、すっごく嬉しそうだった。

 

寮に住んでいた時の思い出が少しだけ蘇ったのかも。

 

母と私。

 

あまり似てないかも思っていたけど、2人とも共同生活と人が好き。

 

母の謎の行動力に少し疲れたが、私の住んでいるところを見てくれて少し嬉しかった。

 

そして突然母が来ても受け入れてくれる素敵な友達に恵まれたことも。

 

続く。

 

|前回までのお話

親子のちょっと恥ずかしい、でも甘酸っぱい話になれば!と思い書きました。

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