【TESEN文庫 第15話】桜を拾う男

JOURNAL|TESEN

大阪シェアハウスの運営スタッフSHUです。

 

シェアハウスで働くわたしが気ままに連載小説を書いております。

 

「シェアハウスってどんなところ?」「どんな暮らしがあるの?」

 

この小説はそんな方へ向けて書いています。

 

ときどき実話なフィクションです。

 

一緒にシェアハウスの暮らしをのぞいてみませんか?

 

シェアハウスで起こる素敵なことが少しでも多くの人に届いたら、そして豊かな暮らしを多くの人に。

 

 

|前回までのお話

 


今年も桜が散るのが早かった。

 

毎年、今年の桜は早かったって言っている気がする。

 

そもそも桜が咲いてから、どれくらいで散るかを知らない。

 

調べてみる。

 

実は桜は、満開になってから、3~5日で散り始めるらしい。

 

早すぎる。

 

そんな一瞬で見頃が過ぎ去る桜に、私たちは思いを馳せる。

 

そんな私も、シェアハウスに来てから2回目の春だ。

 

去年の桜は、シェアメイトのみんなで大阪城に見に行った。

 

今年はちょっと違った。

 

シェアハウスに一番長く住んでいる彼と二人で見に来た。

 

というのも、昨日の夜、リビングでご飯を食べていると、すうっと彼がきた。

 

そして、リビングテーブルにおかしな形の流木を乗せた。

 

その流木の隙間に、桜の小枝を突っこもうとしている。

 

造花かな?と思ったけど、どうやら本物の桜みたい。

 

どこから持って帰ってきたのだろう?

 

上手に出来たオムライスを食べる手を止め、思い切って聞いてみた。

 

「この桜どうしたん?」

 

すると彼はぶっきらぼうに言った。

 

「落ちてた。」

 

落ちてたん?!

 

落ちてるってなに?!。

 

また適当なことを言っている彼に呆れる。

 

桜の枝が落ちているわけないやん。

 

もしかして、どっかで桜の木を切ってきたんじゃなかろうかと思ったが、

 

さすがにそれは窃盗やんと思いながらも、

 

すこし呆れた表情をしていると、彼は自信ありげにこう言った。

 

「落ちてるとこ知ってるねん。」

 

年中みたいなことを言っている。

 

桜がきれいなところを知っているのを自慢げに言うのは分かるが、

桜が落ちているところ知っているのは摩訶すぎる。

 

そして続けざまに彼が言ってきた。

 

「やし、明日、桜拾いにいかへん?」

 

「拾いに行くってなんなん笑」と私。

食い気味に呆れる。

 

それは一緒に桜を見に行くってことで良いんかな?と無理矢理、頭で変換し、

 

「いいよ」と私は答えた。

 

これが昨晩。

 

そして今日本当に桜が咲いている公園にきている。

 

あまり知られていないのか、人も少なく、桜も綺麗に咲いている。

 

なかなか良いとこ知っているやん!と内心関心しながら並んで歩く。

 

通りすぎる人は空に咲く桜を見上げているなか、

 

彼は行き交う人々を注意深くなめるように目を動かしている。

 

昨日はここに落ちていたんだ、とかまだ言っている。

 

仮に昨日、桜の小枝が落ちていたとしても、そんな不思議な奇跡は二日連続二度も起こらない。

 

すると、「ぱさっと」と二つの頭の上で音がした。

 

スズメが桜の蜜を夢中で吸っている。

 

するとそのスズメの重みで、桜のついた小さな枝が落ちてくるのが本当に見えた。

 

落ちてくる。

 

スズメが蜜を吸うのをやめ、驚きの反応で空へ飛び立つ。

 

桜が落ちてくる。

 

時が止まったように。

 

振り向かなくても彼が笑っているのが見えた。

 

私の部屋には桜がまだ咲いている。

 

 

 

 

続く。

 

 

|前回までのお話

言うてる間に夏が来る来ると社会にせかされますよ。

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